どこからともなく、朝がやって来た。
朝は静かに、そして素早く、夜を追い払ってしまう。
夜がどこへ行くのか、朝がどこからやって来るのか。それを考察する暇もなく、交代は速やかに行われる。
太陽は朝よりも遅れてやって来る。
和紙のように薄く張った雲の向こうからぼんやりとした触手を伸ばして、瞬く間に山も道も、このテラスも、そして僕も絡めとってしまう。
この密やかな逢瀬が、僕は好きだ。
太陽の光は幾重にも織り込まれた紐となって、僕の体の隅々まで絡みつき、その光の間を風だけが自由に行き来している。
薄い雲はやがて、恐れをなしたようにどこへともなく消えて行く。夜が去る場所、朝が来る場所と同じ所へ消えて行くのだろう。
太陽はますます強く僕を縫い止めて、離そうとしない。その一方で、優しく愛撫するように僕の肌を撫でて行く。
嫉妬したように強い風が僕にぶつかる。顔にも、体にも。
思わず避けるように顔を伏せた。
足元には、濃い影が蟠っている。
コントラスト。
突然、その影が確かな質量を持って僕のなかに入り込んで来た。
END
あとがき
>[2007/04/09]
雰囲気練習短文。無機物。この無機物相手の練習短文は、思いついたときに書き連ねていく予定です。
艶めかしい雰囲気を目指したのですが、失敗気味。言葉のチョイスが悪いのかな。
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