空の貴婦人 :彼女はまさに空の貴婦人と称するに相応しい女性だった
- 燦然と輝くは太陽の王冠
- 雲のドレスは軽やかに
- 風のヴェールは爽やかに
- 夜のマントに星々を縫い付け
- 薄く研ぎすませた月のサーベ
※燦然…さんぜん
雨の5題 :灰色の建物すらも美しくする雨である
- 雨宿りの合間に
- 光る石
- 雨を待つ
- 雨のつくる弓
- 涙より生まれし
海の5題 :ここが私の故郷、ここが私の住処、ここが私の死に場所
- 滄海に見ゆ
- 海の向こうから来る富
- 檣竿を仰ぐ
- 海の塊
- 嫉妬深き海の女王
※滄海に見ゆ…そうかいにまみゆ/檣竿…しょうかん・ほばしら・マスト
夜の海で5題 :彼女が行こうと誘った夜の海。圧倒的な質感に畏れる。
- 呑み込まれる!
- 鏡、いや第二の夜空。
- 波音だけが満ちる
- 月光の航路
- 指先に絡みつく波は、黒く
波の調べ :妙なる調べを聴け、そして見よ。
- 波に揺られて
- 舳先に散る真珠
- 嗚呼、これは津波だ。
- 漣の彫刻
- 満ちゆく潮
※舳先…へさき/漣…さざなみ/潮…うしお
こどくなはな :ひっそりと咲く
- ひとりで揺れる
- 雨に打たれて
- 艶やかに咲く
- 種は残さぬ
- 孤独な花
私はここで待っています :いつからここにいるのでしょう。
- 私の腕は枝
- 私の指は葉
- 私の体は幹
- 私の足は根
- 私はここで待っています
神の住む木 :カミサマには敬意をもって接するんだよ、怒らせちゃあイケナイ
- 間の花
- 神の住む木
- 100年に一度の芽吹き
- 芭蕉は化ける
- さんしょう
※芭蕉…ばしょう(中国では、女性に化けるとか)/さんしょう…植物の妖怪(中国)
植物の名前で5題 :あの木の下で、いつかお会いしましょう
- 垂楊の下で
- 秋桜揺れて
- 踏みつけた車前草が
- 萩の挿頭
- 寒椿が如く
※垂楊…すいよう・しだれやなぎ/秋桜…あきざくら・コスモス/車前草…おおばこ/萩…はぎ/挿頭…かざし(草木の花や枝などを髪に挿したこと。また、挿した花や枝)/寒椿…かんつばき
春の植物で10題 :彼女が好きだった春。彼女もどこかでこの景色を見ているのか。
- 一輪草の憂鬱
- 微笑みの先には福寿草
- タンポポを摘むと思いだす
- 八重桜の花びら
- 藤が招く
- 木瓜の棘を
- 蕨は慎ましげに
- 涙ひとつ、勿忘草
- 檸檬の花
- 満開の雪柳
※一輪草の憂鬱…いちりんそうのゆううつ/福寿草…ふくじゅそう/八重桜…やえざくら/木瓜の棘を…ぼけのとげを/蕨…わらび/勿忘草…わすれなぐさ/檸檬…れもん/雪柳…ゆきやなぎ
夏の植物で10題 :彼が好きだった夏。彼女もどこかであの景色を思い出しているかしら。
- 薔薇の雨
- あじさい七変化
- 彼と梔子の花
- ノウセンカズラの花は濃く
- 橙の花見えて
- 濡れる葉柳
- 杜若の思い出
- すなわち、芍薬なり
- 寂しいひまわり
- 睡蓮はまどろむ
※薔薇…ばら/梔子…くちなし/橙…だいだい/杜若…かきつばた/芍薬…しゃくやく/睡蓮…すいれん